レターNo.112「目上の方が喜ぶ“ほめ言葉”」(2022年11月1日)

 銀杏の葉も色づき始め、トレンチコートが似合うシーズンになりました。皆様におかれましては、お変わりなくお元気にご活躍のことと拝察申し上げます。

 「最近の部下は幸せですよ!管理職は部下のモチベーションを上げるスキルを学び、日常的に承認の言葉や感謝の言葉を上司から受けられるのですから。先生!私達の心のサポートは誰がしてくれるのでしょうか?私達だって褒められたいです!」金融機関の支店長を対象としたコーチング研修時の、ある支店長の言葉です。周りの支店長も大きく頷いていました。
 このような支店長の訴えには、心に少し痛いものを感じます。確かに、立場が上に成れば成るほど、「承認の言葉」「ほめ言葉」「感謝の言葉」等の、プラスのストローク(心の栄養)は少なくなると思います。
 支店長の訴えを聞いてからは、コーチング研修時に、「目上の方が喜ぶ“ほめ言葉”」もレッスンに入れています。

 

<紙上レッスン> 目上の方が喜ぶ“ほめ言葉”
~上司の「魅力」や「素晴らしさ」を伝えましょう~

1.部下をほめる
 リーダー的な立場の方をほめる場合、その方を直接誉めるのではなく、その方の部下をほめることも効果的です。例えば、「〇〇支店長の部下は皆さんよい成績を挙げていますね。(ご指導が宜しいのですね)」等、具体的項目があればある程、賞賛の気持ちが伝わります。

2.自分の惚れ惚れした気持ちを伝える(私メッセージ)
~〇〇さんみたいになりたい、かっこいい、素敵、うらやましい、等~
 ある人気作家の話です。“ファンレターのメッセージで一番嬉しいのはどのようなものか?”という問いに、「先生みたいになりたい。どうしたらなれますか?」という言葉を受けた時とのことです。確かに才能も過去の経歴も、何もかも丸ごと認められたように感じます。
「支店長、かっこいいです!こんな難しいことが簡単にできてしまうなんて!」等と、自分の惚れ惚れした気持ちを伝えます。気を付けたいのは、「ほめ言葉」の後に、否定的な言葉をつなげないことです。「これがスラスラできる先輩は凄いです。でも私には無理!」では、惚れ惚れした気持ち「うらやましい!」が、「うらめしい」になってしまします。

3.感謝の気持ちを伝える ~上司も、自分も嬉しい、嬉しさ2倍の法則 ~
 「支店長のアドバイスのお陰で、A案件が上手くいきました。有り難うございました。支店長の下で働けてよかったです。」と満面の笑みで報告と感謝の気持ちを伝えました。支店長から「この仕事はあなたがやったんだよ!よく頑張ったね。おめでとう」とお返しのほめ言葉が返ってきました。お互い「よかった!」「やれた!」という2倍の喜びです。支店長も自分もハッピー“win-win”です。
 知っていましたか?心のこもった「ありがとう」の言葉は、どのような種類の感謝の言葉よりも深い意味をもっています。

 如何ですか? まとめてみると、根底に流れているのは、相手に対する敬意の気持ちとその表現です。できているようで、意外にできないものです。
 他人からの「ほめ言葉」は、自分を映してくれる「鏡」のようなもの。「私は成功したんだ」「このやり方でよかったんだ」と気付かせてくれます。自分のことは分かっているようで、分からないものです。「鏡」に映し出されて、自分の強みや魅力、成果に気付き、自己肯定感が高まり、自信になっていきます。教育心理学では“ほめる”ことを「強化法」と言います。ほめる時は、鏡をよく磨き、相手の素晴らしいところをはっきりとしっかりと映し出してあげましょう。

 早速、上司の「魅力」や「素晴らしさ」を、鏡に映してあげましょう。そうしないと上司も「心の栄養失調」になってしまいます。
 最近胸を打たれた、上司への最高の「ほめ言葉」は、9月27日の安倍元総理大臣の国葬においての、菅前総理大臣の弔辞でした。心からのリスペクトが伝わりました。

~~~~~~  ~~~~~~    ~~~~~~   ~~~~~~   ~~~~~~
 話は変わりますが、11月に入ると「ぜんざい」を無性に食べたくなります。
 子供の頃、茶道を習っていました。おばあちゃん先生は「11月1日は茶道のお正月よ」と言って、毎年、生徒(弟子)達に「ぜんざい」を振る舞って下さいました。皆で頂く「ぜんざい」は、とても美味しく、楽しく、お陰様で、お稽古を長く続けることができました。
 茶道の世界の季節は、大きく分けて2つ、夏と冬、風炉(ふろ)と炉(ろ)の季節です。風炉の季節は4月~10月、炉の季節は11月~3月です。
 「茶道」において11月は、1年の中で最も大切な時期とされており、「茶人のお正月」と言われています。11月は、5月~10月まで閉じていた「炉」の中に火が入れられ、本格的な冬の訪れを伝えてくれるのです。そのため茶の湯において、この炉開きという行事は、何事もなく1年を迎えることができたことに感謝する、お正月のような、おめでたいイベントと位置づけられ、「ぜんざい」がふるまわれるのです。
 おばあちゃん先生は、とても厳しく、畳一目の違いや、腕の高さ、低さの1㎝を指摘します。叱られた記憶は山ほどありますが、褒められたことは一度もありません。指導に手抜きをしない、素晴らしい先生でした。残念に思うことは、先生からご指導を頂けた感謝の気持ちを大人になってから、言葉でお伝え出来なかったことです。懐かしい想い出だけになってしまいました。

LOVE
植田亜津子

〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-32 御成門エクセレントビル8階

03-6435-7721(代)

お問い合わせ