レター No.86「行動の見直しと正しい努力」(2020年11月1日)

行動の見直しと正しい努力

 皆様いかがお過ごしですか? 今日からオフィスは「クールビズ」から「ウォームビズ」ですね。
 本年も残すところ後2ヵ月です。今年は、新型コロナウイルスの出現で、あらゆる経済活動が停滞し、世界の景気は第二次世界大戦後、最悪といわれる水準にまで落ち、歴史の不条理を皆が体験しています。
 こうした時代を生き抜く手がかりとなるのは、あきらめない心と粘り強い行動力、未来の可能性を切り拓くパワー、そして忘れてはならないのが、人への感謝と思いやりだと思います。

 史上最年少で、将棋のタイトルを獲得するという偉業を成し遂げた藤井聡太二冠は、記者会見の場で、新型コロナの影響で対局ができなかった間「自分の将棋と向かい合うことができました」と言われました。心に響く言葉です。彼は益々強くなっています。

 さて、先月の「Letter85」にも書きましたが、2019「ジェンダー・ギャップ指数」が、日本は、121位(153カ国中)という結果でした。日本が大きく順位を下げた理由の一つは、「女性の政治参加度」の低さです。先進国の中でも最低ランクです。
 アベノミクス3本の矢「成長戦略」の中で、「女性が輝く日本」と題し、女性の社会進出「202030(ニイマルニイマルサンマル)」の目標を呪文のように唱えながら、リーダー企業が中心となり、女性の活躍推進に力を注いでいます。今年がゴールの年ですが、目標達成は難しいですね。
 「女性管理職がなぜ、増えないか?」、その背景には、職場の構造的な問題もありますが、企業は「管理者(リーダー)になりたがらない」「昇進・昇格を嫌がる」と、“女性の意識”を理由にもしています。
 「雇用機会均等法施行(1986)」以降、私は約30数年間、女性の社会進出・活躍・推進を目標に仕事を続けて来ていますが、悩み相談等を受けている中で、能力は高いのに、“効果的でないことに注力”し、“無駄な努力”をしている“頑張り屋さん”が少なくないことは、「応援団長」として、残念と言うより、「もったいないな!」と思う時があります。
 昇進昇格やキャリア形成に、自身でブレーキをかけている「頑張り屋さん」が、陥りやすいマイナス行動について、下記3点を内省してみて下さい。少しでも心あたりがあれば、早期是正です。そうしないと自己破綻します。

課題1・・仕事の「専門性」だけに価値をおく
 キャリア形成していく上で、仕事の知識やスキルを高め、専門性を磨いていくことは重要なことです。しかし、それだけでは「自分の差別化」にはなりません。自分のキャリアをサポートしてくれる人間関係を築いていくことや、自身の仕事ぶりを「見える化」する発信力も必要なのです。
 女性は新しい仕事や職位に就くと、第一優先は、仕事を覚えること。ある程度できるように成った時、ようやく人間関係に目を向けるといった感じです。分かる気もしますが、実はその時はもう遅いのです。
 男性でも女性でも活躍している人は、「この仕事を上手くやってくためには、何が必要か」と、仕事の初日から周囲にサポートを求めます。それにより、周囲からよいアドバイスも得られ、理解者もふえ、自分の仕事ぶりを周囲に「見える化」でき、周りを巻き込んでいくリーダーシップの発揮ができます。仕事の専門性だけに価値を置いていると、必ず限界がきます。
 キャリア形成には、専門性の高さを武器に、人脈づくりや、仕事の「見える化」が、同時に大切であること、それが実は、昇進昇格と自己のモチベーションを保つ上で必要であるのです。

課題2・・完璧主義者
 女性は長い間、事務の正確さを求められ(期待され)、それが評価されてきたため、キャリア形成においても、事務の正確さが能力評価の条件であり、昇進昇格の大切な要素であると思い込んでいる人がいます。
 例えば、男性は結果を出すために、より大局的なものの見方や戦略的な考え方、人脈にも重きをおき、仕事の知識を得ること、正確な仕事をすることだけに注力しません。そこに、内部女性の男性に対するいらつきが起こるのですが・・・・。
 実は、キャリアを積んだリーダー(中堅女性)は、仕事の「完璧主義者」に陥りやすいのです。気を付けたいことは、「完璧主義者」は、時として職場や周囲にマイナスウイルスを振りまくということです。

 <問題点①> 「完璧主義者」は、「正確さ命」、それを「責任感」の表れと思い込んでいます。細かくチェックをし、口うるさく手厳しい。部下だけではなく、周囲を不安に落とし入れます。誰も「完璧主義者」のボスの下では働きたくはありません。「完璧主義者」の下では、部下は育ちません(部下が悪いのではない)。その結果、孤立し、自分自身もストレスを抱えることになり、自滅していきます。
 <問題点②> 担当業務を自分だけのものとし、他を排除(否定)したり、その仕事について本人しか分からない状況(環境)を意図的につくり、自分の存在感をアピールします。仕事の仕方はマイペースで、時として周囲をいらつかせます。
 仕事の変化は好みませんので、新しい事柄には、あれこれ理由を言って逃げます。ハラスメントが発生することもあります。
 この傾向はキャリアが高くなればなる程、職場の人数が少なくなればなる程、表れやすくなりますので、気を付けましょう。
 「完璧主義者」の困ったところは、「自分は正しい」「自分はやっている」と思い込んでいることと、他人を否定(除外)するところです。人の話は聞き入れませんので、仕事のステップアップ、昇進昇格、キャリア形成には確実にマイナスです。
 間違ってはいけないことは「完璧主義者」であることは、決して悪いことではありません。自分に厳しく、他人には優しく、周囲から尊敬され、その人が「いないと困る」と、神のように慕われ、企業(チーム)の宝のような方が時々いますが、こういう人こそ、真の「完璧主義者」です。お気づきのように、周囲にマイナスウイルスを振りまく「完璧主義者」は「不完璧主義者」なのです。そのことに気づき、真の「完璧主義者」を目指すことです。

課題3:コミュニケーション力
 謙虚さなのか、消極的なのか、言葉を「矮小化」する傾向があります。例えば、「これは重要ではないと思うんですが~、でも・・」、「よいことであるとは思うんですが~、でも・・」「やってはいるんですが~、でも・・」といった話し方です。こういう表現をしていると、周囲はその人を信頼しなくなります。「自分の言うことを自分で支持していない」「責任から逃げる」と受け取るからです。明確に自分の思い、考えをはっきり伝えましょう。主語を自分にしてはっきり発言することです。
 反対に、「しゃべりすぎる」ということもあります。言葉の使い過ぎ、情報がありすぎ、詳細に至り過ぎる、拘り過ぎる等も、周囲を不快にします。
 リーダーとして成長していくためには、メッセージは明確に、正確に、短く、周囲に伝わりやすくすることです。自分のコミュニケーション力はリーダー格になればなる程、磨き上げましょう。

 如何でしょうか?何か思い当たる点はありましたか?
VUCA時代にプラスし、現在はコロナ禍です。確実に「できる人の条件」が変わってきています。自ら、意識と行動に変化を付け、成長を続けていかなければ、生き残ることはできません。課題は真の「自己確立(自律的行動)」です。
 ワーキングパーソン(男女共)は、今まで、「企業任せのキャリア開発」であったことは否定できません。藤井聡太二冠のごとく、じっくり自分自身と向かいあい、反省すべき点は反省をし、見直しすべき点は見直し、自己の未来を予想し、主体的に「キャリアを形成していく」「キャリアは勝ち取っていく」という考え方の基、真摯に「行動の見直しと正しい努力」をしていきましょう。 

 いつぞや、藤井聡太二冠に、ある方が「将棋の神様にお願いすることがあれば、何ですか?」的な質問をしました。彼は、「せっかく神様がいるのなら一局、お手合わせをお願いしたい」、この“神対応”にその場がどよめきました。彼は18歳です。
 どこまでも求道的で、頭が切れ、品格があります。人への対応は常に笑顔で、優しく、静かな口調で丁寧、それなのに、将棋界では誰もが認める最強の1人。年齢や経験は能力(チカラ)には関係ないのですね。ツメの垢を頂きたい!

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植田亜津子

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