レター No.81「『VUCA(ブーカ)』時代に生き残るのは誰か」(2020年6月1日)

 雨に濡れた紫陽花やクチナシの花が、一際鮮やかな今日この頃です。
 新型コロナウイルスが変えた私達の生活は、「緊急事態宣言」の解除後も継続し、不安と葛藤を抱えながら、手探りの「新しい日常」が始まっています。 
 長くて、短いような4月~5月の2ヶ月間、皆様はどのようにお過ごしでしたか? 
私は、今まで怠った為に貯まった、様々なツケの精算の時間となり、引き籠もり生活もそれなりに有意義でした。ツケの一つは、「積ん読」の消化です。

 今回はその中の一冊、「VUCA~変化の時代を生き抜く7つの条件~」(日本経済新聞社)を紹介いたします。
 現代社会は「VUCA(ブーカ)時代」と言われています。「VUCA」とは何か?!
  「Volatility」(激動・変動性)  「Uncertainty」(不確実性)
  「Complexity」(複雑性)    「Ambiguity」(不透明性)
 4つの単語の頭文字を並べた造語です。「あらゆるものを取り巻く環境が複雑性を増し、想定外の事象が次々と発生するため、将来の予測が困難な状態」を示し、このような今の経済や、ビジネス環境を表現した言葉が「VUCA(ブーカ)」です。
 「変化が激しい」「先が見えない」等は、今に始まったことではなく、いつの時代も言われていますが、現在は明らかに「VUCA」の度合いが加速しています。理由の1つは、テクノロジーの進化のスピードが猛烈に速く、その結果、世の中の仕組みやルールが目まぐるしく変わり、先行きが見通せなくなっていることです。
 人生100年時代、これから私達は、どの様に仕事と向かい合い、キャリア形成していけばよいのでしょうか? 本書にヒントがあるかもしれません。では早速、本書の3章『こんな難しい「VUCA時代」に成長出来る人に共通する7つの条件』を取り上げ、解説して参ります。

1.学びのアジリティ
 「アジリティ」とは、機敏さ、敏捷性、素早さという意味です。ここで言う「アジリティ」は、組織ではなく、個人に於ける環境の変化に対する適応の機敏性のことで、“仕事を成功させる為の学び”を最前線の現場から高速習得して、即、現場で適用しながら成功を引き寄せることです。
 「信用の時代」や「信用残高」等の言葉がクローズアップされていますが、人に信用される一番の近道は、何事も俊敏に取りかかり、やり遂げることです。事実、自分の予測を上回るスピードで動いて(仕事をして)いる人を見ると、それだけで一目おいたり、その人との心の距離が縮まりもします。正解の確信がない時代、机上で御託を並べていても結果は出ません。何度もトライ&エラーをするしかありません。それなら、1分1秒でも速く実行したほうがよい。間違っていれば、直ぐ修正すればよい。「正しさ」より「早さ」です。こんなシンプルで強力な武器は他にはありません。昔も今も、結局「スピード」が最も重要なのです。

2.修羅場経験の幅
 ビジネス上で、キャリア形成に有効な修羅場経験とは、どのような経験でしょうか?
 仕事に「責任」はつきもの。その「責任」がより大きな「組織責任」に成なれば成るほど、大きな修羅場経験を積むことになります。ビジネスにハードワークは当然のことですが、「正しい努力」と「無駄な努力」が明らかに存在します。「無駄な努力」とは自分の意思がなく、他人から言われるがままにする作業を指します。自ら自分の頭で成功のために考え抜いて創り上げる努力が「正しい努力」です。その経験は必ず次に繋がっていきます。
 現在、従事している仕事に手応えや成長実感を持てずに、仕事を無難に熟すだけであったり、評論・批判ばかりしている人は、危機感を持ったほうがよいです。また、自分が行っている仕事は、「修羅場経験」や「専門性を高める経験」なのか、その点も振り返ってみる必要があります。それらの経験を積むためには、本人の意思と努力が大きく影響します。

3.客観的認識力
 客観的認識力には、●自己認識 ●状況認識 の二つがあります。「自己認識」には、厳しいフィードバックを与えてくれる人が貴重な存在となります。「自分が認識している自分」と「他者から見えている自分」に大きな乖離があった場合、成りたい自分には成れません。チャンスも巡っては来ません。内面や能力を磨くのは当たり前とし、自分の商品価値の物差しの一つとなる周囲の評判を厳しく、正確にそして素直に観察し、適切な自己認識を形成していくことが重要です。

4.パターン認識力
 いつの時代も優れたリーダーは、成功と失敗の背後にある共通的な「パターン(再現性のある法則)」を見抜く能力と、そのスピードに長けています。不透明さが増す「VUCA時代」には、パターン認識力は有効な意思決定の土台として、すべてのビジネスパーソンに求められる能力です。

5.リーダーの役割を担う内発的動機
 「内発的動機」とは、自身で自分を動機づけることです。そのためには、自分の目標(理想)に向かって自律的にキャリアを形成していく強さが必要です。
 リーダーの役割は「多様な人材を活躍させること」と考えます。このような時代は、人の「多様性」と上手く向き合う必要があり、リーダーが影響力を発揮する相手が、社内外に広がり、その人々にビジョンが語れ、「人に動いてもらうことで成果を上げ、自分が直接手を下さない結果に対して責任を負い、リーダーとしての役割を楽しめるモチベーションをもつ」。理想とするリーダー像です。

6.リーダーに適した性格特性
 性格特性は、生まれつきの先天的な要素と、生まれてからの経験で身に付けた後天的な要素があります。先天的な要素を変化させるのは難しいですが、後天的な要素を形作るのは「経験」であり、特に「幅のある修羅場経験」が有効です。経験を積むことで、自分の動機と性格を時代に合わせた形に最適化していくことが可能となります。
 「役割(立場)が人を作る」とは、正にそれを指しており、「効果的な経験」を積むこが、性格や動機に影響を与えます。
 トップリーダーが共通してもっている要素は「大局性」「粘り強さ」「曖昧さの許容」「積極性」「前向きさ」。つまり「VUCA時代」に成功するリーダーは、「大局を見据え」「曖昧な状況の中で、ベストの情報を集め」、「自らの責任で」決断し実行しています。

7.自滅リスクを回避する力
 1.~6. までは「VUCAの時代」に必要なリーダーの条件でしたが、最後の一つは、リーダーとして気を付けなくてはならないリスク、つまり、リーダーが自滅する典型的なリスクです。言い換えると、周囲から信頼を失い、失脚していくリーダーに多く見られる共通項です。
  ★感情の起伏が表に出過ぎてしまう。
  ★細かいことが気になり過ぎて、マイクロマネジメントに陥ってしまう。
  ★他者のことが信用できなくなり、全て、独断で物事を決めてしまう。
 上記★3つは、平時ではなく「強いプレッシャーが掛かった場合に」と限定されていますが、人は追い込まれた時に本性が出ます。リーダーとして、重要な意思決定をする場面は、正に「追い込まれた」状況です。自滅しないように気を付けなくてはなりません。

 以上が、本書第3章、『こんな難しい「VUCA時代」に成長出来る人に共通する7つの条件』です。説明には、私なりの解釈が入っていますが、興味が湧いた方は、本書をお読みになることをお勧めします。面白い本ではありませんが、役立つ本です。因みに、本書の帯には~「優秀な人」ほど淘汰される~と書かれています。

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 最後に、先月のLetterのクイズ。『「コ・ロ・ナ」の三文字で漢字一文字を作る』
            解答は、「君」です。

 『しばらくは、離れて暮らす「コ」と「ロ」と「ナ」。次逢う時は「君」という字のように!』 「コロナ」と「君」、何と素敵な偶然でしょう!
 このクイズは、研究会の会員でもある、岩崎講師から教えて頂きました。発祥元は分からないそうです。
 早いリスポンスを頂きました、5名の皆様には、お約束通り植田から美味しいスウィーツを贈らせていただきました。
 引き続き、コロナ感染予防を怠らないようにしましょう!今度、皆さんにお会いできた時、ハグができますように!

LOVE
植田亜津子

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