レターNo.130「インフレーション ~人に好かれるマネジメントを~」(2024年3月1日)

 こんにちは!季節の変わり目、天候が不安定な今日この頃ですが、インストラクターの皆様におかれましては、明るくお元気にご活躍のことと拝察申し上げます。

 先月22日、東京株式市場で日経平均株価は、バブル絶頂期(1989年末)に記録した38,915円を超え、39,098円68銭を更新しました。34年ぶりの史上最高値です。現在も39,000円台を超えた高値が続いています。株高要因の一つは、デフレ脱却への期待と言われていますが、気になるのは株価と実体経済の乖離です。
 日銀も、「デフレ脱却に向けたチャンスが訪れている」として、物価や賃金の持続的な上昇に向けて、働く人々の生産性や企業の収益力を高める重要性を指摘しています。
 
 皆様には釈迦に説法となりますが、ここで改めて、インフレ・デフレを振り返ってみましょう。「インフレーション(インフレ)」とは、「相対的にカネの価値が下がり、ヒトやモノの価値が上がる状態」に対して、「デフレーション(デフレ)」とは、相対的にカネの価値が上がり、ヒトやモノの価値が下がる状態」のことです。「インフレ」と「デフレ」は相反するものです。よって、「デフレ」から「インフレ」になれば、経営・マネジメントスタイルも180度変わって当たり前です。

 経営学では、「希少資源を集める企業が競争に勝つ」ことが実証されており、「インフレ」下では「(相対的な希少資源である)ヒトに好かれる経営」が求められ、「デフレ」では「(相対的な希少資源である)カネに好かれる経営」が求められます。このように、「インフレ」下と、「デフレ」下では、「何が」希少資源かが異なるため、それを見極め「何に」重点をおくかに力を注ぐマネジメントが必要となります。

 「インフレ」が続いた昭和時代の名経営者を考えた時、どなたを思い浮かべますか?
先ずは、「経営の神様」と言われる松下幸之助氏ではないでしょうか。彼は会社が財務的危機に直面した時、「一人ともいえども解雇したらあかん。会社の都合で人を採用したり、解雇したりでは、働く者も不安を覚えるやろ。みんなの力で立て直すんや」という名言を残しています。また、本田宗一郎氏は、労使関係がこじれた際に「内輪同士のケンカはやめよう」と諫めたという逸話が残っています。2人の経営者の共通点は、他の人々から「この人と一緒に働きたい!」と慕われる人物です。
 次に、「デフレ」が続いた平成時代に目立った経営者といえば、どの様な方を思い浮かべますか?恐らく、思い浮かべられた方々は“ストーリーテラー(storyteller)、知名度がある人、目を引く肩書きや経歴をもっていて、投資家ウケする人、金融の知識を持ちお金の管理体制を構築できる人”といった方々ではありませんか?
 私が思い浮かべた人物は、稲盛和夫氏です。京セラ・第二電電(現・KDDI)の創業者で、一時経営破綻し再建不能と言われたJALを無給で、僅か2年8か月で再上場へ導いた「平成の経営の神様」です。
 ここで、「令和」に重視すべき経営(マネジメント)について考えてみましょう。
 昭和の「インフレ」下の日本では、ヒトに好かれるための経営哲学や、組織づくりといった点が経営の中心を占め、世界からも“日本の経営は世界一”とまで言われました。 
 しかし、極端な「デフレ」に陥った平成の日本では、カネを守るために、誰からも真剣に読まれることがないムダな書類をヒトに作らせたり、既に終わった失敗事項を責め続ける会議や、ムダな監視をするといった「名ばかり管理」が横行しました。
 現在、日本企業は、歴史的大転換の真っ只中にいます。令和に入ってから、ヒトを大事にしないことのツケを支払わされている事例(トラブル)は事欠きません。「ヒトが辞めていく/ヒトが集まらないので経営が成り立たない」等の悩みは、「カネが足りないから経営が成り立たない」という悩みよりもずっと多く、頻繁に耳にします。また、内部告発により組織が、内側から崩壊するニュースも後を絶ちません。

 このように、昭和の「インフレ」時代にはヒト優位の経営、平成の「デフレ」時代は、ヒト劣位の経営が主流となりました。だとすれば、令和の「インフレ」時代は、もう一度「ヒト優位」の経営が求められてきます。今こそ、昭和・平成の経営のあり方を参考に、令和で活きる「ヒトに好かれる経営(マネジメント)」を、私達は本気で考え構築していく必要があります。
 
 話は変わりますが、JALは2024年4月、元客室乗務員(CA)であった鳥取三津子氏を代表取締役社長に任命し、豪・カンタス航空、仏・エールフランス航空、蘭・KLMオランダ航空の最高経営責任者(CEO)にすることを発表しました。世界的な航空会社を率いる数少ない女性の1人となります。この人事も、稲盛氏の進めた改革がベースになっています。
 稲盛氏はJAL破綻後、初の社長に指名したのは、整備出身の大西賢氏でした。それまでJALの幹部は、一流大学を出た現場を知らない方々で構成されており、経営方針はそこで決められ、あらゆる指示が出でいた、ということです。
 稲盛氏はそこを改革し、現場で働いたことのある人たちを幹部に引き上げました。大西社長の後任である社長も、元操縦士の植木義晴氏、現社長は整備出身の赤坂祐二氏、そして来月の4月からは、元CAの鳥取氏が社長になります。4人のリーダーに共通しているのは「現場」出身者です。
 主要7カ国(G7)の中で男女間の賃金格差が最も大きく、男性優位が続く日本の企業で、現場叩き上げの女性が社長にまで昇進したのは、数少ない事例です。
 鳥取氏が次期社長に選ばれるのは、日本が変わりつつあることを示唆していると同時に、2010年の経営破綻から故・稲盛和夫氏の下で再生を果たし、JALの組織的な変化を象徴しています。

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植田亜津子

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