レター No.68「言葉は最大の凶器」(2019年7月1日)

 今日から7月、本格的な夏の到来です。山開きや海開き、皆様におかれましては、夏休みの計画をそろそろ立て始める頃ではないでしょうか?

 先月、中堅研修がありました。受講者は新人研修以来、6年ぶりのメンバーです。「仕事と人間関係は人を育てるのだなぁ」と感慨深かったです。休憩時間に一人の好青年がニコニコしながら私のところに来ました。
好青年:「僕、新人研修の時に先生に怒られたんです!」
私  :「エッ!〇〇さんを怒った?! 注意じゃあないの?!」
好青年:「ア、そうですね!」
私  :「どんなことを注意した?」
好青年:「“姿勢が悪い!”“どこか身体の調子が悪いの?”って言われました」
私  :(思い出しました!彼は確かに超姿勢が悪かった)「注意されて傷ついた?恨んでる?」
好青年:「イエ!僕、皆んなからも姿勢悪いって言われていたから!」
私  :「今は、姿勢いいわよ! とても逞しく立派に成長したね!・・その時注意が、〇〇さんの心を傷付けてしまったのなら、ごめんなさいね。言いに来て下さり有り難う」
好青年:「イエ!そういう訳で話したのではありません。」 

 大抵の人は傷つけられたことはよく覚えていますが、「傷つけた」ことは直ぐに忘れてしまうものです。なぜなら、「傷つける」ことは自己防衛のために“本能的”にやってしまうことだからです。
 犯罪を犯した加害者でも、自分があたかも被害者のように語っている場面をニュースやサスペンスドラマでもよく見ます。自分が被害者のように感じていることも、実は加害者である可能性を否定することはできません。
 私たちの周りでいざこざがあった時は、「その時の自分はどうだったか?」と、その場の自分の言動を思い起こし、忘れないことです。職場のメンバーは勿論のこと、家族や友達など身近な人に、思わず言ってしまう一言や、政治家の失言等を聞いても、“言葉こそが最大の凶器”であることがわかります。

 最近は、職場やスポーツの世界でも“パワーハラスメント”が問題になっています。相手が傷ついたと言えば、それは“ハラスメント”です。自覚がなくとも相手を傷つけることがあれば、それが、勢いを付けて自分に返ってくるのです。
 「本当のことだから言ってもいい」ということではありません。言葉のセレクトには細心の注意を払う必要があります。言葉を言い換えられるだけの語彙力と表現力が、その人の人格(人間性)として伝わります。

 「論語」に“過ぎたるは猶及ばざるが如し(すぎたるはなお およばざるがごとし)”がありますが、意味は、度が過ぎることは、足りないことより、なお悪質でよくないということです。失言を避けるためには、言葉を選び、ゆっくり、少なめに話すことですね。

 第一線で活躍し続けている方々は、自分の意見をはっきりと言いながらも、人に配慮した話し方をしている人が多いです。辛口コメントや毒舌を売りにしているような方もいますが、あまり聞いていて気持ちがよいものではありません。
 私の最大・最高のテキストは、美智子上皇后様の記者会見やお出かけ先などでお話しになる、人々に寄り添う珠玉の名言です。ご自身の意思や思いを、深い思慮と豊かな感性に溢れたお言葉でしっかりと伝え、その言葉は人々の心にしっかりと届き、勇気さえ与えられます。「言葉」の深さや強さ、力を感じます。

 IT化が進みコミュニケーションのあり方が問題になっている今だからこそ、自分の発する言葉を大切にしたいものです。私達は今、原点に返り、改めて「言葉」の使い方をもっと学習しなくてはなりません。それが人間性(人格)を高めることにつながるからです。

LOVE
植田亜津子

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