レター No.25「“やらされた経験”では成長しない」(2016年5月7日)

 突然ですが、皆さんはどんな時に、自分の成長を実感しますか?
私が思い出すことの殆どは「失敗体験」からです。つまり、失敗して痛い目に遭い、必死になって問題解決に向けて考え、仕事をする。次に同じ失敗を繰り返さなかった時に、達成感と共に、「成長できた!」と実感。

 若い頃の私は自分の意思で物事を決める勇気を持てずにいました。判断に迷うといつも上司や先輩に聞いていました。そんなある日、いつものように上司に指示を受けに行くと、「君は、どうしたいんだ?」と、厳しく問いかけられました。とても強い衝撃でした。「ハッ!」、自分の意思をもって仕事をしなくてはならないんだ、若さや経験の無さを言い訳にしてはいけないのだと、その時気づかされました。今でも忘れられない強烈な想い出です。
 人は経験から学びます。いや、経験からしか学べないと私は思っています。だからこそ、経験の少ない部下や後輩にはできるだけ多くの経験を積ませなくてはなりません。

 しかし、いくら経験が重要だからといって、指示・命令に基づく仕事からは、人は成長しません。管理職研修で私がよくする質問です。「想像してみて下さい。皆さんが上司からある指示を受け、言われた通りに仕事をして失敗しました。その時、皆さんは反省しますか?」、すると10人中10人がこう答えます。「反省しません。言われた通りにやったのですから、責任は上司にあります」。つまり、失敗体験が実になっていません。ではその逆の成功体験はどうでしょう?「上司の指示で、言われた通り仕事をして成功しました。嬉しいですか?」。この問いに対し「いいえ嬉しくありません。自分は言われた通り作業をしただけですから」。せっかく成功しても成功が成長に繋がっていません。このように、人は「やらされ経験」からは学べないのです。何事も自分の意思で決め、試行錯誤した体験からは、深い学びがあります。だからこそ、部下に経験を積ませる時には、上司は教えてはならないのです。自分の頭で考えさせ、自分の意思で行動させるのです。

 子供の頃、補助輪を外して自転車に乗る練習をした経験は誰もあると思います。親が転ばないように補助をしてる限り、子供はいつまでたっても自転車に乗れるようになりません。親が勇気をもって手を離す、すると子供はガシャーンと転び、膝を擦り剥く。痛くても、今度こそはと繰り返し繰り返し練習し、気が付けばスイスイ乗れているのです。これは人の成長のプロセスと同じです。
 部下には失敗する権利があります。それを上司が先回りして奪ってしまってはならないのです。上司がすべきことは部下に失敗を経験させること。失敗から学び取るチャンスを与えることです。
 私達指導者も気を付けなくてはなりません。指導した通りにできない受講者を「何回言えば出来るようになるの」「失敗したらダメでしょう」等と、コメントすると受講者は萎縮し、指導者の意に反し、新しい事柄へのチャレンジを減らしていきます。その結果成功体験が減っていくことになるのです。よく現場で起きていることです。
 失敗を減らそうとすると、チャレンジが減り、成功も減る。失敗を増やせばチャレンジが増え成功も増える、この原則を覚えておきましょう。

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植田亜津子

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