レター No.52「『けじめのある人』が『綺麗な人』より美しい」(2018年6月1日)

☆電車の中で化粧をしている女性をよく見かけます。ちらっと鏡をみたり、さりげなく口紅を塗るのではありません。今朝も念入りな化粧が私の前で始まりました。ファンデーションを塗るところから、アイラインを引く、アイシャドー、マスカラ、ビューラー、ほほ紅、口紅・・と、彼女は鏡を見ながら自分の世界に浸っていました。私も
彼女に見とれていましたが、ふと、周りの視線が気になり、チラッと見回しました。私同様数名の人が彼女をチラチラと見ているのが分かりました。しかし、彼女は全くほかの人の視線は感じないらしい。
  彼女は何のために、誰のためにお化粧をしているのでしょうか?もし、同じ電車に恋人がいたらどうするのでしょう?!

☆ある会社の昼休み、廊下を歯ブラシを咥えて歩いている社員に出会いました。私は見てはいけないものを見てしまったようで、とても困りました。公私混同ではありませんか?

☆先日、あるお茶会にお招きを受けました。「気軽なお茶会ですから、是非、いらして下さい」という言葉を真に受け、「気軽なお茶会・・」きっとたくさんのお客様がいらっしゃる“立礼式”のお茶会でしょう!「美味しいお薄とお菓子を頂き、砂漠のような心を少し潤そう」という思いで参加させて頂きました。一応、帛紗と古帛紗と懐紙だけは持ち、スーツ姿でお伺いしました。
  ところが、そのお茶会はとんでもなく正式なお茶会で招待客は私を含め12名だけ、女性の数名の方々は着物を召され、お茶会のムードを高めて下さっていました。男性の方々はきちっとしたスーツ姿でのご参加でした。私はせめて白のソックスを持参すべきであったと大いに反省しましたが、時は既に遅し。
  恐縮しながら、にじり口から席入り、由緒正しい掛け軸と季節のお花を拝見し、美術館でしか見られないような最上級の茶道具の説明を受けていました。突然、一番着物姿が綺麗な素敵な女性が、スマホを出して、バシャバシャ写真を撮り始めました。それに 刺激されたか、ほかの方々も続いて写真をバシャバシャ、正式なお茶会のムードは正式では無くなりました。私はこのようなお茶席で許可なく写真を撮ってよいものかと疑問を持ちました。
  お茶会はゆっくりと初炭点前、濃茶点前、薄茶点前と進んでいきましたが、どの席でも、美しい着物姿の女性はメモは取るわ、写真は撮るわと、とても勉強熱心でした。男性の方々はお茶に深い知識をお持ちで、そういう状況に不愉快さは見せず、気持ち良くお茶会を楽しんでいらっしゃいました。
  私は以前茶道を習ったことがあり、その当時先生に叱られた想い出があります。 
  厳しい先生で、同じ事を何回も聴けないため、先生が言われたことを習いの席でメモを取ろうとしました。先生は「メモは人前では取りません。お茶席の空気が悪くなります。メモはお廊下の隅で目立たぬようそっとお取りなさい」。何かある度に思い出される先生の言葉です。

 何れも自分のためにやっている行為なでのすが、「美」とは全く逆のように思えます。けじめのないところに「美」は生まれません。「美」とは自分への厳しさだと思います。甘えのない自分なりのけじめをもつ人が美しいと思いませんか?
 人は、管理されることを嫌いますが、自分なりの規律や公私混同には厳しくありたいものです。

LOVE
植田亜津子

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