レターNo.104「70:20:10」(2022年3月1日)

 モノトーンの景色が、梅や桃・・とだんだんと草花の色に飾られ、鳥や虫たちも目を覚まし始め、世界が少しづつ賑やかになってきました。
 インストラクターの皆様は、お変わりなくご活躍のことと存じます。いよいよ新人研修のシーズンに入りますね。当社も3月からスタートです。

 先日、昨年の新人研修の受講者に、Cafeでばったり会い、少しお話をしました。その成長ぶりに感動、「きっとよい経験をしているのだろう!」と思いました。このように、「最近、彼(彼女)は成長しているな」と感じる時があります。

 「70:20:10」の比率をご存じですか?この比率は何を意味しているでしょう?
・・・・答えは「人の成長を決める比率」です。
 優れたマネージャーの成長について、長年調査をしている米国の研究所によれば、成人における学びの70%=自分の仕事経験、20%=他者の観察やアドバイス、10%=本を読んだり研修等を受ける、と報告されています。
 経験とは「人間と外部環境の相互作用」のことで、自分が直接係わった「直接的経験」と、他者を観察したり、アドバイスを受けたり、本を読んだりするという「間接的経験」に分かれます。
 “経験=成長(学習)”、という観点から見ると、「直接的経験」からの学びが、70%と圧倒的で、アインシュタインも「何かを学ぶためには、自分で体験する以上によい方法はない」という言葉を残しています。「直接的経験」が人の成長の源泉であることは間違いないです。
 しかし、他者から学ぶ「間接的経験」を軽視することはできません。なぜなら、自分で経験できることには限りがあるからです。上司、先輩、友人、知人の体験や、書物に書かれている歴史上の人物の生き様等は、私達が経験できない、広く深い情報を提供してくれています。こうした他者の経験は、自分の判断に迷いが生じた時や、失敗したり、つまずいたり、自分自身を前に進めなくてはならない時等に、貴重な情報(手がかりや道しるべ)となります。私も先人が残した言葉をいくつか“座右の銘”にし、弱い自分に「カツ!」を入れています。

 日米の調査で興味深い「マネジャーの成長を促す経験」をまとめたものがあります。管理職が成長したきっかけは、日米双方同じで、“新規性の高い仕事”をした時と報告されています。
 “新規性の高い仕事”とは、例えば、会社に入って初めて就いた仕事、異動に伴う不慣れな仕事、初めて部下をもった経験、文化の違う海外に勤務した経験等、未経験の仕事をした時です。更に、潰れそうな事業を立て直したり、新規事業の立ち上げや、価値観の違う人々をマネジメントした経験、高いレベルの知識やスキルが要求される仕事をした時等も含まれています。修羅場経験ですね。「出所:Lombardo&Eichinger(2010)」
 “新規性の高い仕事”をする事で成長する理由は、明快でシンプルです。未経験の仕事は、既成枠の中にない、新しい知識やスキル、意識の刺激があります。エンパワーメントできるのです。
 しかし、分かってはいながら、新しい仕事や大変だと思う仕事には、失敗やストレスが付録のように付いてきますから、尻込みしてしまうのですね。そういったリスクを側面からサポートしてくれるのが「間接的経験」です。
 以前、有名なオリンピックアスリートを多く排出している、水泳のコーチの話しを聴いたことがあります。『伸びる若手は、先輩の経験知をしっかり学ぶことができます。8割方の先輩方は間違ったことは言いません。若手は、登山で言うと1合目や2合目しか知りませんが、先輩方は7合目や8合目を知っています。一番伸びない人間は、自分の狭い仮説の下に、1合目や2合目をうろうろしています。素直に人の話が聴け、基本(型)をしっかりと身に付けた人は間違いなく伸びます。』
 先人の知恵を吸収することの大切さが伝わってきます。但し、漠然と他者の言うことを聴くということではなく、「アドバイスの本質は何か? 何が成功に導いているのか?!」等、自問自答しながら、自身で試していく中で新しい価値が生み出されていくのですね。
 加えてもう一つ、他者の態度や行動を「観察する力」も重要です。心理学者のバンデュラーは、他者を観察し、それを模倣しながら知識やスキルを獲得していくことを、総称して「社会的学習」と呼んでいます。
 「社会的学習」をサポートする役割は、職場の先輩方や研修担当者です。研修時に「もう少し、研修担当者(先輩方)が、新人のお手本になってくれれば、説得力になるのにな~・・」と、思う時があります。なぜなら、新人は、研修担当者や先輩方の言動をよ~く観察しています!

 新人は初めての配属先に、一人で初出勤し、誰から指図されることなく、知らない上司・先輩方に積極的に挨拶をすることを求められ、経験のない電話に出たり、全て未経験の仕事にChallengeしていくのです。相当の勇気とエネルギーが必要です。
 そこに、他者から学ぶ「間接的経験」、つまり「ビジネスマナー研修」の役割があるのです。事前に対人スキル(知識と技術)を身に付けることで、自信が付き、様々な場面に勇気をもってChallengeできるようになります。新人達の一番最初の「直接的経験」を後押しできるような、勇気と希望を与える研修をしましょう!
 インストラクターの皆様、季節の変わり目、健康にお気を付け下さい。

LOVE
植田亜津子

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